大畑屋の写真日記 目次へ
金子みすゞを訪ねて
2008年4月19〜20日  山口県長門市仙崎
詩人、金子みすゞのふるさと、山口県仙崎を訪ねました。



町ぜんたいがみすゞワールド、そこに住む人のやさしさまで伝わってきます。

「大漁」

朝やけ こやけだ 大漁だ
大羽いわしの大漁だ
浜は祭りのようだけど
海の中では何万の
いわしのとむらいするだろう




王子山公園から仙崎を眺める。もちろん当時は橋はなかった。

「王子山」

公園になるので植えられた、
桜はみんな枯れたけど、

伐られた雑木の切株にゃ、
みんな芽が出た、芽が伸びた。

木の間に光る銀の海、
わたしの町はそのなかに、
竜宮みたいに浮かんでる。

銀の瓦と石垣と、
夢のようにも、霞んでる。

王子山から町見れば、
わたしは町が好きになる。

干鰮のにおいも ここへは来ない、
わかい芽立ちの香がするばかり。








みすゞ通り。なんでもない町なのに優しさで包まれるような安らかな気持になれます。









まちなかギャラリー、中には町の歴史を辿った写真が展示されていました。



















「こころ」

お母さまは
大人で大きいけれど。
お母さまの
おこころはちいさい。

だって、お母さまはいいました、
小さい私でいっぱいだって。

私は子供で
ちいさいけれど、
ちいさい私の
こころは大きい。

だって、大きいお母さまで、
まだいっぱいにならないで、
いろんな事をおもうから。



「弁天島」

「あまりかわいい島だから
ここには惜しい島だから、
貰ってゆくよ、綱つけて。」

北のお国の船乗りが、
ある日、笑っていいました。

うそだ、うそだと思っても、
夜が暗うて、気になって、

朝はお胸もどきどきと、
かけて濱辺へ行きました。

弁天島は波のうえ、
金のひかりにつつまれて、
もとの緑でありました。

角の乾物屋





青海島の鯨墓
鯨漁が盛んだった頃、捕った母鯨のおなかの中に胎児がいたという。
70体を丁寧にまつった墓がある。生きていくことは誰かの命の犠牲の上になりたっている。





「鯨法会」

鯨法会は春のくれ、
海の飛魚 採れるころ。

濱のお寺で鳴る鐘が、
ゆれて水面を わたるとき、

村の漁師が羽織り着て、
濱のお寺へ いそぐとき、

沖の鯨の子がひとり、
その鳴る鐘を ききながら、

死んだ父さま、母さまを、
こひし、こひしと ないてます。

海のおもてを、鐘の音は、
海のどこまで、ひびくやら。

現在は「みすゞ記念館」になっている金子文英堂




書斎が当時の面影を残していました



「お魚」

海の魚は かわいそう。

お米は人につくられる、
牛は牧場で飼われている、
鯉もお池で麩を貰う。

けれども海のお魚は
なんにも世話にならないし
いたずらひとつしないのに
こうして私に食べられる。

ほんとに魚はかわいそう。

詩は金子みすゞの作品から引用しました。詩以外の文と写真は:おおはたやすお
© Himawari software Designs